自宅兼事務所の家賃や光熱費は必要経費になる?

個人事業主の確定申告

個人事業主の方が自宅の一部を事務所として使うことがあります。このようなとき、自宅の家賃等を経費に計上することができるのか気になりますよね。今回は、個人事業主が自宅の一部を事務所として使用するときの必要経費について税理士が解説します。

必要経費となるためには

個人事業主にとって、必要経費は多ければ多いほど、事業所得が少なくなり、税金が少なくなります。しかし、何でも必要経費にできる訳ではありません。

必要経費にできるのは次の費用と決められています。

(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用

個人事業主が、業務のために事務所を借りて支払った家賃は、業務上の費用なので、必要経費となります。

 

 

自宅兼事務所の家賃は必要経費にできる?

では、自宅の一室を事務所として利用している場合など、自宅兼事務所を借りているときの家賃は、必要経費にできるのでしょうか?

この場合、居住用部分があるため、家賃の全額を必要経費とすることはできませんが、一部を事業用で利用していることが明確なときは家賃の一定割合を必要経費とすることができます

この場合、家賃を住居部分と事務所分の面積比で按分するなど、合理的な方法で住居部分と事務所部分に按分し、このうち事務所部分のみが必要経費とすることができます。このように生活用か事業用かを按分することを家事按分といいます。

次のような事例で見てみましょう。

(事例)
家賃 月額90,000円
面積 全体60㎡(住居部分40㎡、事務所部分20㎡)

 

この場合、必要経費となる金額は次のように計算します。

90,000円 × 20平米 / (40平米+20平米) =30,000円

仕訳は次のようになります。

借方 貸方
(地代家賃) 30,000 (普通預金) 90,000
(事業主貸) 60,000

 

なお、正確な面積が不明なときは、正確に計算した場合と大きな誤差がでないようであれば、使用している部屋数で按分するなどの方法も考えられるでしょう。

電気代、電話代などの関連支出についても、合理的な方法で家事按分を行い、事業用部分を必要経費に計上することができます。ただし、水道代やガス代などは、事業で使っているものでなければ、必要経費に計上することは難しいでしょう。

合理的な方法で家事按分が行われているかどうかは税務調査でチェックされることもあります。合理的に按分していることを示すことができるようにしておくように、根拠資料を残しておきましょう。

 

 

自宅兼事務所が持ち家の場合の必要経費は?

自宅兼事務所が持ち家で、住宅ローンを支払っているようなときは、その住宅ローンを必要経費にできるのでしょうか?

残念ながら、住宅ローンを必要経費とすることはできません

そもそも住宅ローンは借入金の返済であって経費となるものではないからです。

その代わりに建物の減価償却費を必要経費とすることは可能です。

建物の取得価額を住居部分と事務所部分に按分し、事務所部分について事業用耐用年数を用いて計算した減価償却費を計上することができます。

また、固定資産税や光熱費、支払利息などについて、家事按分した結果を必要経費とすることもできます。

住宅ローン控除の適用を受けている場合には、事務所部分を設けることによって、事務所部分については住宅ローン控除の適用を受けることができなくなりますし、適用要件を満たさなくなることもありますので注意してください。

家族名義の自宅に事務所を置いているときの必要経費は?

家族名義の自宅に事務所を置いているときは、家族に家賃を支払って、必要経費とすることはできるのでしょうか?

名義が違いますし、実際に家賃を支払っているのであれば、必要経費にできそうなものですが、生計を一にしている家族に対して支払った家賃は必要経費にはできないと決められています。

生計を一にしているのだから、それが家賃なのか生活費なのか実際のところわかりませんからね。支払った側は必要経費に計上できない一方で、受け取った方も所得に計上する必要はありません。なお、業務のために借りている土地や建物に関して支払った固定資産税を必要経費にすることはできます。

生計を一にしていない家族や親族に対して適正な金額で支払った家賃であれば必要経費に計上することができます。
ただし、家賃を受け取った家族や親族は、受け取った家賃が収入(不動産所得)となり、それに対して税金がかかる可能性があります。また、住宅ローン控除の適用を受けている場合には、持ち家の場合と同様に住宅ローン控除できる金額が少なくなったり、適用要件を満たさなくなる可能性がありますので注意が必要です。

メリットとデメリットをしっかりと考えて進める必要があるでしょう。

 

 

このページのまとめ

1.自宅兼事務所の家賃は、合理的な方法で住居部分と事務所部分に按分し、事務所部分のみが必要経費となる。

2.持ち家のとき、住宅ローンの返済は必要経費とならないが、減価償却費を計上することができる。

3.家族に対して家賃を支払う際は、メリットとデメリットをしっかりと考える必要がある。

この記事を書いた人
松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士・宅地建物取引士
みんなの会計事務所(大阪市)代表。同所の確定申告代行サービスは、毎年300名以上のお客様が利用。低価格・丁寧・スピーディーな仕事が好評を呼んでいる。不動産業、ベンチャー支援、相続・相続対策にも強い。

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