医療費控除などの適用要件の中で「自己と生計を一にする配偶者その他の親族」という言葉がでてきます。このときの「生計を一にする」とはどういう意味なのでしょうか?なんとなくはイメージできそうですが、税金に影響していますので間違えのないように理解しておく必要があります。今回は、「生計を一にする」という税務上の用語の意味について税理士がポイントを解説します。
「生計を一にする」とは?
医療費控除の対象となる医療費は次のように決められています。
つまり、ご自身の医療費だけではなく、ご自身と生計を一にする親族の医療費を支払ったときも、医療費控除の対象となります。
このときの「生計を一にする」とはどのような場合を言うのでしょうか?
例えば、配偶者や未成年・就学中の子であれば、通常は同じ家計で生活を営んでいるでしょうから、生計を一にしているものと考えられます。場合によってはご両親と生計を一にしていることもあるでしょう。
生計を一にしているかどうかは、あくまで生活資金を共にしているかどうかで判断します。扶養親族かどうかで判断するわけではないので注意しましょう。
生計を一にしているかどうかはいつ時点で判断すればよい?
生計を一にしているかどうかは、『医療費を支出すべき事由が生じた時または医療費を支払った時』で判断します。
「生計を一にする」と同居していることは同じですか?
親族が同居しているときは、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除いて、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
ただし、同居が要件ではありません。同居していないときでも「生計を一にする」ものとして取り扱われることがあります。
例えば、次のようなケースでは同居していなくても「生計を一にする」ものと取り扱われます。
親族の範囲に制限はある?
ここでいう親族とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます。
医療費控除を適用する際の判定
医療費控除の対象は扶養親族に限られますか?
医療費控除等は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費等を支払った場合に適用することができます。
配偶者やその他の親族の範囲について、所得金額の要件はありません。そのため、所得がある親族のために支払った医療費であっても、その親族が医療費を支払った者と生計を一にする者であるときは、その医療費を支払った者の医療費控除の対象となります。
例えば、子が勤めていて独立した収入があるときでも、親と生計を一にしていて、親が医療費を支払うようなことが考えられます。このようなときは、親が医療費控除の適用を受けることができます。
別居している母親の医療費等を子供が負担した場合
前に説明したとおり、「生計を一にする」の判定にあたって、同居は要件ではありません。
そのため、例えば、母親の年収が少額で、子供からの仕送りで生活しているというような状況にあれば、その子供と母親とは「生計を一にしている」こととなり、子供が負担した医療費は、その子供の医療費控除等の対象となります。
所得が多い方が家族分をまとめて控除を受けると節税になる
例えば、共働きの夫婦で、共通の家計から夫の医療費15万円、妻の医療費12万円を支払ったものとします。
この場合、夫婦それぞれが医療費控除を受けるとすると、
夫:15万円-10万円=5万円
妻:12万円-10万円=2万円
の計7万円が医療費控除の金額となります。
一方、夫または妻がまとめて医療費控除を受けると、
(夫15万円+妻12万円)-10万円=17万円が医療費控除の金額となります。
医療費控除の金額=支払った医療費の合計額-10万円(または総所得金額等の5%の少ない方)-受け取った保険金等の額
このように夫婦で合算した方が、控除される金額が少なくてすみます。
また、所得が多い方(所得税率が高い方)で申告をすると、より多くの税金を減らすことができるでしょう。
なお、夫婦や家族で「生計を一」にしていない方についてはこのようにできませんので、注意してください。
まとめ
「生計を一にする」という意味について解説しました。同居していなければならないとか、控除対象配偶者や扶養控除の対象親族でないと生計を一にしていることにはならないとか、勘違いされやすいポイントですので、間違えないようにしてください。しっかりと理解して、正しく控除を適用すれば税金を減らすことができます。