「青色申告」という言葉を聞いたことはありますか?個人事業主の方や不動産オーナーの方などは、青色申告で確定申告をすることにより、節税をすることができます。今回は青色申告制度について解説します。
青色申告制度とは?
青色申告制度とは?
青色申告ではない申告のことを白色申告といいます。
正規の簿記って何?
「正規の簿記」とは、損益計算書と貸借対照表を作成することができる組織的な簿記の方式のことをいい、通常は複式簿記となります。ただし、複式簿記ではない簡易帳簿でも一定の要件を満たすときは「正規の簿記」として取り扱われます。
「正規の簿記の原則」というととても難しいもののように感じますが、簿記3級程度の知識を身につけて、「弥生会計」などといった市販の会計ソフトを使って日々の取引を記録していけば、青色申告の要件を満たす帳簿を作成することができます。また、最近では、「freee」や「マネーフォワード」といったクラウド会計ソフトも普及・発展してきています。これらのクラウド会計ソフトはデータを自動で取込みをするなどして、簿記の知識が十分でなくても、これまでよりも簡単に帳簿を作ることができるようになりました。
簡易帳簿でも最高65万円の青色申告特別控除の適用可能
標準的な簡易帳簿としては、1現金出納帳、2売掛帳、3買掛帳、4経費帳、5固定資産台帳が挙げられます。ただし、これだけでは最高10万円までしか青色申告特別控除の適用を受けることはできません。最高65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、これらの標準的な簡易帳簿に加えて、預金出納帳や受取手形記入帳といった「債権債務等記入帳」を作成して、全ての取引を整然と記録し、貸借対照表及び損益計算書を作成できるようにする必要があります。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告のメリット
青色申告の特典(メリット)には次のようなものがあります。
1.青色申告特別控除を受けることができる
個人事業または不動産事業を行っている方が青色申告の適用を受ける場合で一定の要件を満たすときには所得から最高65万円を控除することができます。
一定の要件とは、正規の簿記の原則に基づいて会計帳簿を作成し、貸借対照表と損益計算書を添付して、期限内に確定申告書を提出すること、です。
それ以外で青色申告の適用を受ける方は、不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて最高10万円を控除することができます。
2.配偶者や親族に給与を支払うことができる(青色事業専従者給与)
通常は、配偶者や親族に給与を支払ってたとしてもそれは必要経費とはなりません。しかし、青色申告の適用を受ける場合には、事前に届出書を提出することによって、その労務の対価として適正な金額と認められる範囲で、必要経費に算入することができます。配偶者や親族に給与を支払い、所得を分散することで、所得税等の節税をすることが可能となります。
3.貸倒引当金を計上することができる
事業所得を行っている方が青色申告の適用を受ける場合には、年末時点の売掛金等の貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業の場合は3.3%)の金額を貸倒引当金に計上したときは、その金額について必要経費とすることができます。
例えば、期末に300万円の売掛金が残っているときは、その5.5%である165,000円まで貸倒引当金を計上することができます。必要経費が増える分、所得税等の節税を図ることができます。
4.損失を持越し(繰越し)と繰戻しすることができる
事業所得などで損失が生じ、損益通算をしても控除しきれないときには、その控除しきれない部分の金額を翌年以後3年間にわたって持ち越しすることができます。また、前年に青色申告をして所得税の納税をしているときは、その損失額を前年に繰戻しするおとにより、前年に納めた所得税の還付を受けることができます。
このように青色申告の特典(メリット)は基本的に個人事業主が納めるべき所得税などの税金を減らすことができるというものです。例えば、青色事業専従者給与の適用を受けて、配偶者に支払った給与を必要経費とできる場合とそうでない場合で、所得税などの税金の額は全く違ったものとなってくる可能性もあります。税金というお金に直結するものですので、個人事業主の方が青色申告の適用を受けないと損をしてしまう、とも言えるでしょう。
青色申告のデメリット
青色申告のデメリットとしては「帳簿を作成しないといけないこと」が挙げられます。
しかし、白色申告だからといって全く帳簿を作成しなくてよい訳でありません。
また、適時に帳簿を作成すると、売上や利益(儲け)をタイムリーに把握することができ、経営判断や節税にも活かすことができます。適時に帳簿を作成することは負担がかかりますが、大きなメリットがあるとも言えるでしょう。
青色申告の適用を受けるための承認申請手続
個人事業主の方等が青色申告の適用を受けるためには、事前に、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」という書類を提出しておく必要があります。
「所得税の青色申告承認申請書」には申請期限があり、適用を受けようとする年の3月15日までに提出しなければ、その年は青色申告の適用を受けることができません。なお、新しく事業を開始した年は、事業を開始した日から2か月以内に申請期限となっています。
この「所得税の青色申告承認申請書」を提出しても、通常、税務署から連絡が来ることはありません。申請期限内に提出し、その後、何も連絡がなければ、「所得税の青色申告承認申請書」に記載した申請年から青色申告を適用することができます。
青色申告は取消しされることもある
青色申告の承認申請をしても、青色申告が取消しされることもあります。
取消しされることがあるのは次のようなケースです。
<青色申告が取消しされるケース(例)>
・税務調査等で帳簿書類の提示をしなかったとき
・税務調査等で帳簿に偽りの記載をしていることがわかったとき
・2年連続で、申告期限を過ぎて申告したとき など
ルールどおりにしていて青色申告を取消しされることはありませんが、期限後の申告が続いたときは青色申告が取り消しされることは知っておきましょう。
なお、青色申告の取消しがされると、取消しの通知があった日から1年以内は、青色申告の承認申請をしても却下されることがあります。
まとめ
青色申告制度について解説しました。青色申告はとてもメリットの大きな制度ですから、個人事業主の方や不動産オーナーの方などは是非活用するようにしましょう。