前年分の確定申告をして一定額以上の所得税を納めることとなった人は、所得税の予定納税が必要となることがあります。うっかり所得税の予定納税のことを忘れてしまうと資金繰りに慌てることとなったり、支払えなかったらペナルティがかかることも。今回は、この予定納税の概要と予定納税の減額申請について、税理士がポイントを解説します。
所得税の予定納税とは?
予定納税とは?予定納税が必要となる人
前年分の確定申告をして一定額以上の所得税を納めることとなった人は、当年分の所得税を前払いしなければなりません。この前払いすることを「予定納税」といいます。
次の要件にあてはまる人は、予定納税が必要です。
予定納税が必要な人
前年分の所得金額や税額などを基準に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上の人
予定納税基準額は、前年分の所得金額のうちに山林所得、退職所得等の分離課税の所得及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がなく、災害減免法の規定の適用を受けていないときには、前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります。
つまり、上記にあてはまる人の前年分の申告納税額が15万円以上であった場合は、今年、予定納税が必要となります。
予定納税があるかどうかはどうしたらわかりますか?
前年分の確定申告書を見て、予定納税基準額が15万円以上かどうかを確認しましょう。また、予定納税が必要となる人に対しては、6月15日までに、税務署から予定納税に関する書類が送付されてきます。
予定納税は所得税の前払い
予定納税をした人は、翌年の3月15日までに確定申告をする必要があります。
確定申告の際には、計算された申告納税額から予定納税額を差し引いて、納める税額を計算します。計算した結果、納める税額がマイナスとなったときは、還付を受けることができます。このように予定納税は「所得税の前払い」なので、これによって、年間の所得税が増えたり減ったりすることはありません。
確定申告をする際は、申告書に予定納税額を忘れずに記載するようにしましょう。
予定納税はいつまでにしなければならない?
予定納税が必要となった人は、予定納税基準額を1/3した金額を2回に分けて納税しなければなりません。納税の期限は次のとおりです。
第1期 | 7月1日から7月31日まで |
第2期 | 11月1日から11月30日まで |
予定納税を忘れる延滞税がかかる
予定納税は所得税の前払いであるとはいっても、法律に基づき、期限までに納めなければならないものです。納税期限までに予定納税をしないと、延滞税が課されることとなりますので、注意しましょう。
所得税の予定納税は減額申請できる
所得税の予定納税の減額申請とは?
予定納税が必要な方でも、「今年は前年ほど税金はでない」ということもあるでしょう。
そのような場合には、『所得税の予定納税の減額申請』をすることにより、予定納税額を減額することもできます。
現況による申告納税見積額<予定納税基準額
当然ですが、現時点の納税見込が予定納税基準額を下回っている場合しか、減額申請をすることはできません。
また、次のような理由も求められます。
② 業況不振などで、所得が前年分よりも明らかに少なくなると見込まれる場合
③ 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた場合
④ 所得控除額や税額控除額が前年分よりも増加するときで一定の場合 など
申告納税見積額は、第1期及び第2期分について減額申請をするときは6月30日時点の現況で見積りをし、第2期分のみについて減額申請をするときは10月31日時点の見積りをします。それぞれのタイミングで所得金額や控除額を見積りをする必要があります。
所得税の予定納税の減額申請をするための手続き
所得税の予定納税の減額申請をするには、所轄の税務署長に対して「予定納税額の減額申請書」を提出します。これを受けて、税務署長が承認した場合には、「減額申請の承認通知書」が送付され、予定納税額が減額されます。
この所得税の予定納税の減額申請にも次のように申請期限が設けられています。
第1期分及び第2期分について減額申請を行うとき | 7月1日から7月15日まで |
第2期分のみの減額申請を行うとき | 11月1日から11月15日まで |
申請期限を過ぎると、減額申請ができず、原則どおり予定納税をしなければなりませんので、注意してください。
なお、「予定納税額の減額申請書」を提出するときは、「申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類」を添付しなければなりません。
まとめ
予定納税について解説しました。予定納税の義務がある方は、予定納税のことを忘れないように注意しましょう。また、予定納税の義務のある方でも一定の場合には減額申請できることも覚えておいてください。