個人事業主が業務で使う車を売却して一定金額以上の利益がでたときにも税金がかかり、確定申告が必要となります。どのように確定申告をすればいいのでしょうか?今回は個人事業主が車を売却したときの確定申告のやり方について解説します。
個人事業主が業務用の車を売却したときの利益は「譲渡所得」
個人事業主が業務用の車を売却して一定金額以上の利益(所得)がでたときにも税金がかかります。個人の利益(所得)に対する税金の取扱いは、その所得の種類によって変わってきます。
では、このような場合の利益(所得)はどの所得に区分されるのでしょうか?
個人事業主が業務用の車を売却してでた利益は「譲渡所得」となります。
業務で使う車に関わる利益であっても「事業所得」とはならないのですね。
ただし、譲渡所得といっても株式や不動産を売却したときとは異なり、給与所得や事業所得などの所得と合わせて『総合課税』となり、課税される所得の金額に応じて15.315%~55.945%の累進税率での税金(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかります。
また、車を売却して損失が生じた場合には、その損失を給与所得や事業所得などの他の総合課税となる所得と損益通算することができます。
個人事業主が業務用の車を売却したときの会計仕訳
事業所得とはならないため、事業用の会計帳簿で計上する仕訳は次のようにしておくとよいでしょう。
(売却益がでたとき)帳簿価額50万円の車両を100万円で売却したとき
(借方) | (貸方) |
現金 1,000,000 | 車両 500,000 |
事業主借 500,000 |
(売却損がでたとき)帳簿価額80万円の車両を50万円で売却したとき
(借方) | (貸方) |
現金 500,000 | 車両 800,000 |
事業主貸 300,000 |
このように「固定資産売却益」や「固定資産売却損」は使用せず、「事業主貸」または「事業主借」を用います。
総合課税の譲渡所得の確定申告のやり方
1.譲渡所得を計算する
まず、譲渡所得の金額を計算します。
総合課税となる譲渡所得の計算方法は所有期間が5年超かどうかによって変わります。
所有期間が5年以内のとき(短期譲渡所得)
所有期間が5年超のとき(長期譲渡所得)
この計算方法により、売却益が50万円までであれば、譲渡所得は生じないこととなります。また、所有期間が5年超のときは2分の1にすることができます。所有期間によって課税される金額が大きく変わってくるのが特徴です。
2.合計所得を計算する
事業所得や給与所得など他の総合所得となる所得と合算(損益通算)し、合計所得を計算します。
3.各種所得控除を差し引く
2で計算された合計所得から、社会保険料控除、配偶者(特別)控除、扶養控除、基礎控除などの所得控除を差し引き、課税される所得金額を計算します。
4.税金(所得税)を計算する
課税される所得金額に所得税率を乗じて所得税額を計算します。
住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、所得税額から控除します。
ここで計算された所得税額に2.1%を乗じたものが復興特別所得税となります。
他には住民税もかかります。
車両を売却した年の減価償却費の計算方法
車両を年の途中で売却したときに、年初から売却時までの減価償却費はどうなるのでしょうか?
原則として、事業所得の必要経費には算入しません。この場合、年初から売却時までの減価償却費に相当する額の分、譲渡所得の取得費が多くなります。つまり、事業所得が多くなり、譲渡所得が少なくなります。
しかし、特例で必要経費に算入することも認められています。
この場合は、事業所得が少なくなり、譲渡所得が多くなります。
つまり、どちらか有利になる方を納税者が選択することができます。
譲渡所得には50万円の控除がありますから、売却益が50万円に達するまでは、減価償却費相当額を事業所得の必要経費に算入して、譲渡所得を多くする、ということが考えられます。
事業所得がプラスかマイナスか、譲渡所得の50万円控除や長期譲渡所得が2分の1になることなどを考えながら、総合的に判断するとよいでしょう。
個人事業主が車を売却したときの注意点
課税事業者の場合は消費税がかかる
消費税の課税事業者となっている場合は、車両の売却代金も課税取引となり、消費税がかかります。消費税は売却代金に対してかかるものですから、50万円の控除ありませんし、利益がでていなくても消費税はかかりますので注意してください。
損失を申告すると節税できることもある
個人事業主が車両を売却して損失がでたときは、必ず確定申告が必要な訳ではありません。しかし、これまで説明したように、損失を事業所得や給与所得などと損益通算することで、税金を減らすことができる可能性がありますから、忘れないようにしましょう。
まとめ
個人事業主が業務用の車を売却して利益がでたときは、「譲渡所得」として課税対象となります。しかし、50万円の控除があるため、売却益が50万円までであれば所得税等はかかりません。損失がでた場合も申告することで税金を減らすことができる場合がありますから、忘れないようにしましょう。